白い闇の中で

我はどれほど歩いたのだろう。
この霧の漂う長い道を。
我は幾度踏みしめたのだろう。
幾重に積み立てられた白い骨の道を。
我は幾度血を流したのだろう。
踏みしめた骨で足を傷つけ。
そして我は幾度声を聞いたのだろう。
嘆き、怒り、恨み、憎しみ。
我が手によって葬られた者たちの声を。


幾度悲鳴を聞き、幾度足をえぐる骨の感触に苦しみ、幾度深い霧の中で凍えたのたろう。
あの赤い仮面の男。
仮面ラーイダV3に倒され、爆風と炎に体を砕かれ・・・・・。
悪しき我が魂がここにたどり着いてから。

ドクトルGと呼ばれた男、ゲルハルトは深い霧の中をひたすら歩き続けた。
ここは地獄小道。
罪を犯したものが己の犯した罪に苦しめられながら進む道。
ゲルハルトは己が殺めた人の骨で足を傷つけながら歩くしかなかった。
引き返すことは出来ない。
罪を悔い改め、今一度転生するまで地獄に落ちた瞬間からこの道を進むことになるのだ。
一歩一歩足を進めるたびに骨の道はゲルハルトへの復讐をするかのように鋭利な刃物さながらにゲルハルトの足の肉を傷つけえぐっていく。
痛さに足をひこうにも彼の意思に反して足は骨の道を踏みしめていく。
そんな地獄。
何日たったのだろう。
ゲルハルトはその過酷な白い道をただ歩くしかなかった。
さらに白い霧はゲルハルトの魂を凍えさせていく。
鋭利な骨と冷たく凍った白い霧の道の中、ゲルハルトは天に問い掛けた。
生前、神を恨み、仏を憎み、邪神をあがめた男にあるまじき行為をみずから行ったのだ。
憎悪をかなぐり捨て、あえぐように光ささぬ空を見上げ、彼は天上の神々に問うた。

-何故に、それほどまでに我を苦しめる。神というものがいるならば何故に我をそれほどまでに苦しめる?
いっそ地獄の業火の中へ放り込み、二度と転生させず、赤い炎の中へ苦しませてくれればよいものを。
何故に。
何故に我に転生の機会を与えた?
我は人を殺めた。
細菌、毒薬、爆薬。
あらゆるもので人を苦しめた。
しかし、そのたびにわが心は張り裂けそうだった。
もう一つの弱き心のために。
なあ、神よ。
何故にこのような地獄へ落とした。
我はもう生まれたくは無い。
輪廻転生など私にはいらぬ。
ひととしての生き様など我にはいらぬ。
あの薄汚れた世界へと戻りたくは無い。
それならばいっそ。
赤い炎の中でわが魂を焼き尽くしてくれ。
それがかなわぬのならば転生するときは畜生としての道を歩ませてはくれぬか?
頼む。頼む・・・・・ー
しかし天からの声は何も聞こえなかった。
それどころか、甘えるなとばかりに突風が吹き、ゲルハルトを幾里か押し戻した。
ゲルハルトはただ白い骨の道を歩くしかなかった。

彼は仕方なく歩いた。
いつまでも果てることの無い苦痛に満ちた白い道を。
幾百里歩いたのだろう。
天から声がした。
ー悔い改めよ。
そなたには思い出さねばならぬ罪がある。
記憶に封じられた二つの罪が。
思い出したとき、そなたの肉体と精神に耐えがたき苦痛が起きるだろう。
それがそなたに課せられたいましめ。
それがそなたの償うべきもの。
それを受け入れたとき、そなたには安息の光がさすであろう。
ーと・・・・・
ゲルハルトがその罪の内容を問う間もなく一陣の風が彼に襲い掛かった。
彼がかつて闇からの声を受け入れてから吹いた風と同じように。
冷たく、凍てつく砂埃の混じった風が・・・・・・。


     (次回、"聖地の風に吹かれ"に続く・・・・)




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